三十郎。2007/12/06

 朝半寝ぼけのままぼーっと歩いていると、椿三十郎のポスターが駅に貼ってあったりする。

 ……見る度微妙と思うのはなんでだろうなあと思ってたんですね。
 色合い加工されてて「ど紫の衣装」はそんなに気になんないけど、なんだかなあ。
 私が黒沢版三十郎大好きな所為も、多分にあるのは認める。
 織田裕二とっくに四十郎じゃねえのかという疑問もとりあえずはスルーできる。
 しかしどこが引っかかるのかを突き詰めたら、結局トヨエツ半兵衛にたどり着きましたよ。
 いや別にトヨエツに恨みはない。ええ役者さんだよなと思う。
 だが室戸半兵衛はトヨエツでは無い……気がする。半兵衛は三十郎より若くて、自信に溢れてて、あふれる才気が微妙に狂気に近寄っている感じの鞘の無い抜き身の刃、言わば「もう1人の三十郎」だったと記憶するのですが。
 半兵衛は切れ者だが自信の分だけ妙に素直で真っ直ぐな感じがして、逆にそこが狂気じみてて怖いのである。
 つまりだ。そのなんだ。もう少し若いキャストはいなかったのですか、と……。
 三十郎の方が老獪なんだよ、半兵衛より……。
 そんで老獪でおっさんな三十郎が、天然おっとりさんの奥方に翻弄される所にぐっとくる訳で。あの襖にのの字のシーンは最高におかしい。

 あと記憶を反芻するとあれですね。黒沢監督の撮る男の色気ってすっげえなあとしみじみ思います。
 並べて思い出すと三船三十郎の、仲代半兵衛の、色気がむしろおっかないですよ。