チェインについて語ってみる。2015/05/10

 チェイン・皇。
 自分に関わるあらゆるものを希薄化させることのできる万能潜入スキルを持つ「不可視の人狼」。
 ザップとは犬猿の仲。
 とは言うものの、ザップはしつこく二十四時間構って欲しがる方だから、それに一々つき合ってたらチェインでなくても身が持たない。
 そもそも人狼局の様子見てると不可視の人狼のコミュニティは基本、女子しかいないようですから、言ってみれば女子校育ちのチェインに男子校最右翼みたいなザップの相手はきつかろう。
 にしても、あんまり周りの人や自分のことをどう思っているのかも分かりにくいというか、無関心かと思ったらいきなり男気あふれるところを見せてくれるので、その度不意打ちされる思いがします。
 つかめない。
 いや、よく見てみれば人狼局の同僚たちとは女子会やってたりする訳ですし、リーダーのエメリア(エメリナ?)姉さんに泣きついてみたり、仲間意識を構築できない性分ではないんですよね。
 クラウスはボスとして信頼してますし、スティーブンのことは憧れで、K・Kと一緒にいるシーンは少ないですが、それでも女子仲間の感じはしますよね。
 チェインの、業務は基本クールにこなそうとする態度がスティーブンのまねっこだったらかわいいな。異性だとしてだけでなく、仕事の出来る大人としての意味でも憧れだったら本当にかわいい。それはさておき。

 絡まなくても黙ってその場をずっと見てる、というのがやっぱりチェインの立ち位置の基本にあるんですね。
 見てるだけ、ということから読みとれる性質は用心深さ、警戒心の高さです。
 チェイン個人というよりは種族全体の傾向ではないかと。
 人狼の能力はその気になれば諜報でも暗殺でもし放題ですから、そこら辺利用されるリスクが高くて、同族以外に対する警戒心が強いとしても当たり前かな。
 警戒心が強くて、情報を集めようとするのが安心を求める本能の領域だとすれば、人狼は諜報活動にはうってつけの種族だと思います。
 それに人狼局のお嬢さん方が「5人がかりで94発撃ち込んでただの1発も標的に当てられない」上に諜報に専念しようじゃないかと言う局長の意見が喜ばれることから見れば、手荒なことが嫌いなのも種族的な特徴と言えるんじゃないでしょうか。
 不可視ということ、暴力に訴えなくても何物にも縛られないことに人狼という種族の誇りがあるのを感じます。
 その上で考えをもう一段裏返して考えますが、人狼は、警戒心が強い反面、同族と認めた者に対しては逆に愛情と信頼が深い種族だったりしないでしょうか。
 言わなくても通じるのが前提なら、表情が乏しくても言葉が足りなくてもまあアリかと。そして当たり前のように信頼しているから、逆につきあいは一見あっさりめ。要するに、言葉と説明が足りてない。
 だとすると同族狩りをしようとするベルベットは本当に仲間から見ても狂人としか言いようがないんだろうな。ものを言わずとも信頼できるはずの同族がそれだというのは、心底怖いし悲しいことなんだと思う。

 で、そこを踏まえて彼女の行動を考える。
 唐突に見える行動の、言葉と説明が足りないのはそれでも通じる信頼の現れ。
 レオが財布取られたところを黙って素通りしたように見えて後から取り返してきたり、ザップが師匠の試験で苦慮してるとこをアシストしてやったり、レオの友達なら助言を入れてやろうとしてみたり、ツェッドのエアギルス取り返すあの切り口上を、人狼仲間を守るベルベット戦の口上と比較して考える。

 同族じゃないけれどそれに次ぐ、あるいは同等の深い信頼と愛。
 ライブラの皆は彼女にとって紛れもなく大事な仲間なんだなあ。
 ベルベット戦の口上や「基本のネジが飛んでいる」戦い方から考えて多分、チェインの感情は人狼としてかなり激しい部類でしょう。
 わかりにくいところに隠された、不器用で無骨な熱血。
 それは中々ハードボイルドな男前だと、思います。
 チェインかっこよかわいい。

 10巻のクライマックス、チェインがどこにいてどういう役割を持っていたかを考えて、どんな気持ちでいたかに思いを馳せるとたまらんね。