日付偽装日記:京都旅行2012/01/31

 1月28日〜29日、京都へ行ってきました。
 いや、祖母が母と京都行き1泊2日のツアーに行くと言いまして。干支の辰年にちなんでお寺の龍の絵なんかを見に行くツアーで「日程が合うなら辰年のあんたを連れて行ってやらんでもないがどうする」と。……お願いした訳です。えぇ。
 行き先を列挙すれば東福寺龍吟庵、泉涌寺雲龍院、妙心寺法堂及び玉鳳院、相国寺法堂、天龍寺法堂、長楽寺、建仁寺法堂。
 1泊2日にしては詰め詰めでないか、と思った人は鋭い。嵐山での自由行動時間が付いている他、妙心寺では結局三門と風呂も見学したので尚更詰め詰めですよ。
 ──ので、正直こことここ行かなければもうちょい時間ゆったりできたんじゃないのか。と思ってしまうのが泉涌寺雲龍院と長楽寺。
 雲龍院の評価が低いのは単純に見た屏風絵の力が他の寺から大分に劣るから。長楽寺の評価が低いのは、残念ながら見るものに乏しいから。何しろ龍にまつわるらしい本尊は秘仏で、他に何があるかというと建礼門院がここで出家しましたというエピソードだけ。大河狙いか、という印象は否めない。それに切り盛りしている学生ガイドさんは真面目で親切だけど、お寺の人の気配が全然しない。他所の子供働かせて自分何しとる、という気分がちょっとね……。終盤の方に見た所為もあって、「何でこの寺見に来ないといけないんだろう」って思ったです。

 で、どこが一番かというと迷う所。でもねぇ、禅宗の本山……ことに「京都五山」なんて言われる名のあるお寺は、やっぱり建物立派な訳ですよ。その立派な建物の天井絵が悪い筈ないんでさ。
 相国寺・狩野光信「蟠龍図」、妙心寺・狩野探幽「雲龍図」、天龍寺・加山又造「雲龍図」、建仁寺・小泉淳作「双龍図」。
 どれもひとつひとつ特徴がありつつ迫力もあって、面白かった。
 迫力で言えば、多分天龍寺と建仁寺が双璧。何しろでかい。建仁寺なんか108畳あるんだぜ。墨絵だけど新しいから色も鮮やかだし。相国寺はいわゆる「鳴き龍」で顔立ちにも愛嬌があり、妙心寺の龍も正統派の古典だけあって、どっちか言えば愛嬌かなぁ。
 あ、それと天龍寺と建仁寺はお坊さんの解説がつきました。
 天龍寺の解説は、後で聞いたら例えば修学旅行生相手の法話とか、座禅会の指導とか、そういう担当の名物和尚さんらしい。
 話も慣れていて、何より熱心で面白いんだけど、何しろ今話題が多い。お寺と建物の説明、世界遺産指定のお庭、もちろん見に来た龍の絵の由来と経緯、そして時節柄東北の震災へボランティアに行った話もある訳で──話を聞く内に足下がしんしんと冷えてくる訳で……(ちなみに坊さんはフェルト製と思しき厚底スリッパ状のものをお履きである)。だからと言って……話が佳境に入った所で受付のおばちゃんせっついて「巻いて下さい」って言わせるもんでもないと思うんだ添乗さん……そういうお願いは話が始まる前にするもんだぜ……。
 後の時間気にしないときにもう一度聞けたらいいなあ。
 建仁寺の解説は、何と言うか祖母と母が2人揃って「何たるハンサム」と言いました。2人とも私より遥かに面食いなので間違いなくイケメンと申し上げていいのではないかと思います。私としては若干「袈裟衣は3割増」効果があるんじゃないのかなぁと思うのですが。
 でも話上手で快活な方だったので、楽しかったですよ。そういやあったなぁ、マニアによる仏像大量盗難事件!そういやここもだったか!
「私第1発見者でして」
 なんと。
 拝観時間が終わったのでお厨子を閉めに来たら「観音様が居らしはらんのです」そうか、いらしはるもんなのか。で、どこかにおいでになったのかと聞いて回っても誰も知らんので、盗難届けを出した、と。今は無事にお戻りになり、盗られたというのも情けない話なので今は仏間を「アルソックさんにお守り頂いております」そうな。
 重文の襖絵も、国宝の風神雷神図屏風も、キャノン寄進の高精細デジタル複製画なので「近寄るのも写真を撮るのもご自由に!」という気さくなお寺なのに、観音さんの居る部屋だけは入れないのはそういうことなんだそうで。
 盗難事件の前はもしかしてもっと近くまで入れてくれたんじゃないのかなぁと思うと、惜しい。盗難ダメ、ゼッタイ。

 あと、お寺以外に特筆すべきは1日目のお昼。妙心寺のすぐ傍、お寺の御用も勤める精進料理のお店で「阿じろ」っていうところだったんですね。
 ここが、すごかった。
 写真、いやせめて何食べたかメモっておくんだった、と気がついたときには旅行が既に終わっていた訳で(言い訳すれば新幹線が遅れた上に詰め詰めのスケジュールである為お昼へたどり着いたのが2時半過ぎであり、そんなことへ気を回す余裕なんかなかったのである)。
 基本的には「何を食っても半端無く美味かった」という記憶しかない。
 覚えている所で言えばそうさなぁ。皆さん「ごま豆腐」は食べたことありますかね。あれ、作り方を言えばごまの他に油分が豊富なナッツ類でもできるものでして、だからもしかするとピーナツ豆腐なんてものを食べたことのある人もいるかもしれない。
 でもね、「ピスタチオ豆腐」を食べたことのある人はそういないと思うの。少なくとも私は初めてだったね。
 あと白みその腕物、具入りの粟麩を揚げた上に大根が1枚かぶせて、確か三つ葉とゆずが飾りに乗ってたと思う。見た目にも大変美しいものでありました。他にも色々沢山出て、しまいは水菓子の他にお薄とチョコレート味の羊羹ですよ。
 精進料理舐めてた……と思いました。
 帰ってきてから思わず本屋行って精進料理のレシピ本とか買っちゃった。
 で、本屋のついでに何気なーくミシュラン京阪神版を見たら……載ってました。「阿じろ」。1つ星。 先に 言え。

 そんな旅行でした。楽しかった!