周回遅れ2010/01/16

 私、ひとつのネタを1回キャリーオーバーすると、延々反芻しながら引きずっていくタイプです。
 例えばスカパラの最近のライブにおける新曲の中に、ピアノとカホンがメインの曲があるらしいと聞いて盛大に吹いた話も機を逸したまま持ち越していたのですが、思い出せばあれを聞いたのは11月のことである。ええかげんにしなさい。
 と言う訳で年末に回してもらった本の感想をメモ帳に下書きしたまんま、年を越しました。
 だって、どうせならちーとは読みでのある感想文を書きたいじゃない……。そういうスケベ心を出したときって大抵、本筋を見失ってわけのわからんこと書いてますよね。書き直し……。

 という申し訳な前置きを置いて書くのもなんですが、ものは畠中恵「とっても不幸な幸運」ですよ。
 ざっくりと筋を言えば、新宿某所にマスター以下基本的に男しかいない、しかもウェイターの健也以外はいい年のおっさんという天国のような酒場があり、そこへ毎回何故か持ち込まれることになる「とっても不幸な幸運」と書かれた缶を開けることを切っ掛けにして起こる、ささやかだけれど当事者にとってはそれなりの大事件をめぐる全6話+序章終章の短編集。
 軽く優しく、懐かしい。
 大学出る辺りまで読んでいた、少女漫画……というかA5位で辞書のような厚みになってる「別冊花とゆめ」とか「ミステリーDX」とか「プリンセスGOLD」とか、あの辺の漫画の匂いがする。
 まぁ逆に言えば、色々突っ込んだら穴の開きどころは事欠かないような気がするし、「とっても不幸な幸運」と言うお題が凝っている割に開けた後の缶の存在感が希薄で、この発生した事件が当人にとってどう不幸でどう幸せなのか、今ひとつ繋がらないという難所はあるのですが。
 でもこの手の軽い読み物の中なら、そういう傷はむしろ少ない方じゃないかなぁ。以前「百万の手」を立ち読みしたときは、ちょっとキャラクターも雰囲気も繊細すぎる印象で途中でドロップアウトしたのですけれど、これは割と楽しいまま読んでいけました。丁度いい案配。
 おっさん可愛くて飯が旨そうでいい酒がきちんと想像できるように書けていれば、とりあえず満足ですね私は。

 さーて明日は神保町から横浜までどの位でたどり着けるものか……。着いた時にはもう解散、なんてことになりませんよーに。