社長とバニーとヒーローと(1) ― 2011/08/22
マーベリック社長とバニーとヒーローとについて考え出すと割と止まらなくなります。20話感想文にもちょろっと書いていますが、別記事でちょっと語らせてください。
表向き、社長はバニーの養父であり、かつ雇用主でもあります。またヒーローシステムの構築によってNEXTの社会的地位の確立と差別排除に貢献してきた人でもあります。
で、裏ではバニーの両親を殺した張本人であり、犯罪組織と結託している悪党な訳です。
この二面性が矛盾することなく共存する人間像を考えると、これが面白い。
なぜ社長は自分で殺した親友の息子を育て、また似合いもしないヒーロー事業に心血注いでいるのか。
まず、社長とバニーについて。
バニーは両親を殺され、その記憶を改竄されている反面、20年以上社長に養育され、かつヒーローとなることに対する全面的なバックアップを受けています。
ではそもそも社長はバニーのことを大事にしているのか、ということから考えていきましょう。
こう言うのも何ですが商品としてのバニーを好きだということは、誰も異存はないと思います。
スターヒーローを、「無敵のヒーロー」型と「悲劇のヒーロー」型に分けるとしましょう。
「無敵のヒーロー」は、ある程度演出で作り上げることができますが、「悲劇のヒーロー」はそうはいきません。悲劇となる物語の核、本人の外見的・性格的な要素、そしてヒーローとしての実力、むしろ偶然のバランスによって成立するものです。
ブルックス夫妻殺害から割と早い時期、ことによると現場で、社長はバニーの「悲劇のヒーロー」としての素質に気付いた筈です。
両親を殺されており、NEXT(しかもヒーロー向けの能力)であり、疑うことなく将来は美形。しかも両親の仇は育ての親。
完璧です。作ろうとして作れない部分がひと揃い揃った金の卵です。
恐らく、犯罪組織に手を貸してマッチポンプすることでヒーロー人気をギリギリ維持していた、もしかすると看板スターのレジェンドも能力減退期に入っていた頃かもしれない、崖っぷちの社長にとって希望の星だったことでしょう。
じゃぁ商品として以外の愛情は持ち合わせていないのか、というと、そうでもないんじゃないかな、と思われる点がいくつかあります。
例えば、バニーのデビュー時の年齢です。
2才までにはNEXTであることが判明し、4才から手元に抱えているのに。本人の意志だって固いことですし、若き天才ヒーローとして売り出すことも可能だったはずなのに。10代のドラゴンキッドやブルーローズが活躍している業界で、24才は決して早い方ではありません。
24才、おそらく大学→ヒーローアカデミー→デビューの経歴を辿っているのではないかと思われます。
商品としてしか見ていなかったら、脇道に逸れることなくヒーロー一直線に育て上げ、18才位までにとっととデビューさせてまずは天才少年ヒーローとして稼ぎ、実力の点で脂がのって来た所を見計らって復讐イベントを開始して人気のテコ入れをする方が自然でしょう。デビュー早い方が投資回収も早いですしね!
イメージ作りの一環とか世間体、という考え方もできるのですが、ヒーローを引退した後のことも考えてないか、という見方もできるんですね。引退後、更には自分がいなくなった後も。経営学専攻とかだったら尚、いい。
バニーを虎徹と組ませてデビューさせる、ということも親心の片鱗に見えるのですが、その前にじゃぁ社長にとってヒーローとは何なのか、少し考えたいところであります。
社長とヒーロー。
NEXTの社会的地位の確立と差別排除の為に「正義のヒーロー」を作ってイメージ好転を図る。
口で言うのは簡単ですが、賠償金キングの虎徹を見るまでもなく、ヒーローの活動には金も掛かるんです。
理想だけじゃシステムの運営さえできません。ヒーローの活動だけでは飯が食えず、かと言って娯楽としての側面を伸ばしすぎるとただの見せ物となってしまい、「NEXTの社会的地位の確立と差別排除」という目的から離れてしまいます。
理想と現実のバランスを取りながら社会的信頼を得て、治安制度の一部に組み込まれるまでに至る、その努力と苦労は計り知れないものがあると思うのです。
社長、ヒーローに対する夢はすごく強いのではないか。
そして、ヒーローを機能させる為に必要な算盤勘定が先に立ち、かつ正義感や倫理性の面で難のある自分が、能力の性質以前の問題でヒーローになれないことも、よく知っているのではないか。
クリエイターとしての素質は無いがプロデューサーとしての能力ならあるぞ、ということですね。
社長はブルックス夫妻とも殺害に至るまでは良好な関係にありました。理想を語り、かつそれに溺れることなく地に足をつけて現実に変えて行く社長は、資産家で研究者であるブルックス夫妻にとっても魅力的だったはずなのです。ブルックス夫妻の人間性に関するデータが少ないので簡単に判断することはできませんが、親友だというところに嘘がないとするならば、上辺だけの理想で騙せる相手ではないように思えます。
さて、そんな「ヒーローに対する愛情はあるが、自分はありとあらゆる意味でヒーローには向いていない」社長がヒーローにするつもりで子供を育てます。
4才のバニーちゃんは聡明な上、大変素直な良い子です。
自分にあまり近づけて育てると、ヒーローに向いていない自分の気質を吸収してしまう恐れがあり、そしてヒーローに必須の正義感や倫理について、自分が教えてやることができません。
多分、ですが。
社長、バニーを自分からはできるだけ離して育てたんじゃなかろうか。
20年間養父養子の間柄にしては何か他人行儀な関係もそれなら理解できる。ヒーローアカデミーだけじゃなく、小中高も全寮制の学校に入れたりしてるんじゃないのかな。
バニーちゃんの、優秀な外面や仕事を選ばないところ、身も蓋もない計算高さが、社長の努力にも関わらずバニーちゃんがうっかり社長から引き継いじゃった部分だったらたまらない。
でもって、ヒーローに大事な部分が伸ばせないままバニーちゃんは成長し、ヒーローアカデミーに入れてもそこら辺が伸びてくる兆しも無いままデビューを考える時期が到来した場合、社長は何を考えるべきか。
有り余る正義感とヒーローたるものどうであるべきかという魂を、しつこく挫けずバニーちゃんに叩き込める人を、バニーの近くに投入することを考えればいい。
つまりおじさん、ワイルドタイガーである。
教える、というよりしみ込ます、が目的なら教師として買ってくるよりもコンビにして無理矢理にでも一緒に居させた方が効果的。
しかもベテランであれば、あまり人付き合いの上手でないバニーと他のヒーロー達との間が気まずくならないように取り持ってくれることも期待できる。
何か仕事上で失敗してもバニーひとりに責任を集中させなくてもよく、関係がうまくいけば虎徹ちゃんがお父さんな役割もこなしてバニーの人間性をいい感じに高めてくれるかもしれない。
バニーの豆腐メンタルを考えれば、バニーがいかなる精神状態になったときでも別に出動させられるヒーローを抱えていることにメリットがある。
その上人気は下降線で賠償金も抱えている。きっとお買い得。
コンビ結成は、親(馬鹿)心的にも経営者的にも、死角のない選択ではないかと考えます。
この後、ジェイク戦の意味や、ここへ来て乱発される記憶改竄能力、ていうかあんたバニーの心を何だと思ってなところを続けたかったのですが、一旦切りますね。長過ぎらあ。
表向き、社長はバニーの養父であり、かつ雇用主でもあります。またヒーローシステムの構築によってNEXTの社会的地位の確立と差別排除に貢献してきた人でもあります。
で、裏ではバニーの両親を殺した張本人であり、犯罪組織と結託している悪党な訳です。
この二面性が矛盾することなく共存する人間像を考えると、これが面白い。
なぜ社長は自分で殺した親友の息子を育て、また似合いもしないヒーロー事業に心血注いでいるのか。
まず、社長とバニーについて。
バニーは両親を殺され、その記憶を改竄されている反面、20年以上社長に養育され、かつヒーローとなることに対する全面的なバックアップを受けています。
ではそもそも社長はバニーのことを大事にしているのか、ということから考えていきましょう。
こう言うのも何ですが商品としてのバニーを好きだということは、誰も異存はないと思います。
スターヒーローを、「無敵のヒーロー」型と「悲劇のヒーロー」型に分けるとしましょう。
「無敵のヒーロー」は、ある程度演出で作り上げることができますが、「悲劇のヒーロー」はそうはいきません。悲劇となる物語の核、本人の外見的・性格的な要素、そしてヒーローとしての実力、むしろ偶然のバランスによって成立するものです。
ブルックス夫妻殺害から割と早い時期、ことによると現場で、社長はバニーの「悲劇のヒーロー」としての素質に気付いた筈です。
両親を殺されており、NEXT(しかもヒーロー向けの能力)であり、疑うことなく将来は美形。しかも両親の仇は育ての親。
完璧です。作ろうとして作れない部分がひと揃い揃った金の卵です。
恐らく、犯罪組織に手を貸してマッチポンプすることでヒーロー人気をギリギリ維持していた、もしかすると看板スターのレジェンドも能力減退期に入っていた頃かもしれない、崖っぷちの社長にとって希望の星だったことでしょう。
じゃぁ商品として以外の愛情は持ち合わせていないのか、というと、そうでもないんじゃないかな、と思われる点がいくつかあります。
例えば、バニーのデビュー時の年齢です。
2才までにはNEXTであることが判明し、4才から手元に抱えているのに。本人の意志だって固いことですし、若き天才ヒーローとして売り出すことも可能だったはずなのに。10代のドラゴンキッドやブルーローズが活躍している業界で、24才は決して早い方ではありません。
24才、おそらく大学→ヒーローアカデミー→デビューの経歴を辿っているのではないかと思われます。
商品としてしか見ていなかったら、脇道に逸れることなくヒーロー一直線に育て上げ、18才位までにとっととデビューさせてまずは天才少年ヒーローとして稼ぎ、実力の点で脂がのって来た所を見計らって復讐イベントを開始して人気のテコ入れをする方が自然でしょう。デビュー早い方が投資回収も早いですしね!
イメージ作りの一環とか世間体、という考え方もできるのですが、ヒーローを引退した後のことも考えてないか、という見方もできるんですね。引退後、更には自分がいなくなった後も。経営学専攻とかだったら尚、いい。
バニーを虎徹と組ませてデビューさせる、ということも親心の片鱗に見えるのですが、その前にじゃぁ社長にとってヒーローとは何なのか、少し考えたいところであります。
社長とヒーロー。
NEXTの社会的地位の確立と差別排除の為に「正義のヒーロー」を作ってイメージ好転を図る。
口で言うのは簡単ですが、賠償金キングの虎徹を見るまでもなく、ヒーローの活動には金も掛かるんです。
理想だけじゃシステムの運営さえできません。ヒーローの活動だけでは飯が食えず、かと言って娯楽としての側面を伸ばしすぎるとただの見せ物となってしまい、「NEXTの社会的地位の確立と差別排除」という目的から離れてしまいます。
理想と現実のバランスを取りながら社会的信頼を得て、治安制度の一部に組み込まれるまでに至る、その努力と苦労は計り知れないものがあると思うのです。
社長、ヒーローに対する夢はすごく強いのではないか。
そして、ヒーローを機能させる為に必要な算盤勘定が先に立ち、かつ正義感や倫理性の面で難のある自分が、能力の性質以前の問題でヒーローになれないことも、よく知っているのではないか。
クリエイターとしての素質は無いがプロデューサーとしての能力ならあるぞ、ということですね。
社長はブルックス夫妻とも殺害に至るまでは良好な関係にありました。理想を語り、かつそれに溺れることなく地に足をつけて現実に変えて行く社長は、資産家で研究者であるブルックス夫妻にとっても魅力的だったはずなのです。ブルックス夫妻の人間性に関するデータが少ないので簡単に判断することはできませんが、親友だというところに嘘がないとするならば、上辺だけの理想で騙せる相手ではないように思えます。
さて、そんな「ヒーローに対する愛情はあるが、自分はありとあらゆる意味でヒーローには向いていない」社長がヒーローにするつもりで子供を育てます。
4才のバニーちゃんは聡明な上、大変素直な良い子です。
自分にあまり近づけて育てると、ヒーローに向いていない自分の気質を吸収してしまう恐れがあり、そしてヒーローに必須の正義感や倫理について、自分が教えてやることができません。
多分、ですが。
社長、バニーを自分からはできるだけ離して育てたんじゃなかろうか。
20年間養父養子の間柄にしては何か他人行儀な関係もそれなら理解できる。ヒーローアカデミーだけじゃなく、小中高も全寮制の学校に入れたりしてるんじゃないのかな。
バニーちゃんの、優秀な外面や仕事を選ばないところ、身も蓋もない計算高さが、社長の努力にも関わらずバニーちゃんがうっかり社長から引き継いじゃった部分だったらたまらない。
でもって、ヒーローに大事な部分が伸ばせないままバニーちゃんは成長し、ヒーローアカデミーに入れてもそこら辺が伸びてくる兆しも無いままデビューを考える時期が到来した場合、社長は何を考えるべきか。
有り余る正義感とヒーローたるものどうであるべきかという魂を、しつこく挫けずバニーちゃんに叩き込める人を、バニーの近くに投入することを考えればいい。
つまりおじさん、ワイルドタイガーである。
教える、というよりしみ込ます、が目的なら教師として買ってくるよりもコンビにして無理矢理にでも一緒に居させた方が効果的。
しかもベテランであれば、あまり人付き合いの上手でないバニーと他のヒーロー達との間が気まずくならないように取り持ってくれることも期待できる。
何か仕事上で失敗してもバニーひとりに責任を集中させなくてもよく、関係がうまくいけば虎徹ちゃんがお父さんな役割もこなしてバニーの人間性をいい感じに高めてくれるかもしれない。
バニーの豆腐メンタルを考えれば、バニーがいかなる精神状態になったときでも別に出動させられるヒーローを抱えていることにメリットがある。
その上人気は下降線で賠償金も抱えている。きっとお買い得。
コンビ結成は、親(馬鹿)心的にも経営者的にも、死角のない選択ではないかと考えます。
この後、ジェイク戦の意味や、ここへ来て乱発される記憶改竄能力、ていうかあんたバニーの心を何だと思ってなところを続けたかったのですが、一旦切りますね。長過ぎらあ。
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